コラム『百姓のまなざし』

ヒメジオン

耕した畝の隣は草を刈らずにおいてある

そこにヒメジオンが咲いていた

後で抜こうかと思い、隣の畝で仕事をしていたら

ヒメジオンの一枚の葉が手を振っているように揺らぐ

何だかとても楽しそうなのだ

葉っぱとして生きていることが嬉しいな、という喜びが私の心に聞こえてくる

抜こうと思っていたが
今日はやめておこう

百姓はいつも生き物と接し感じて、そして人間の概念でいう死を生み出す

だから、仕事中に目の前に現れた生き物に対する情けは強く

生き物が立ち去ってくれるのを待つ

仕事のためにむやみやたらに切ったりはしない

だから、生き物と自分との距離が近づくほど
百姓の仕事というのははかどらない

逆に生産性や効率を求めすぎると
百姓と生き物の距離は断絶されるのだろう

天地自然の生き物の意識は
どうやら百姓仕事に没入していくことで

姿かたちを現してくれるようだ