コラム『百姓のまなざし』

アザミ

私の田んぼの畦や土手にはアザミがよく生えています。

草刈りをしているとき、アザミを見つけるとアザミを残して草刈りを続けます。

田んぼの草刈りは地主さんもしてくれているので、そのときに刈られてしまうかもしれません。

しかし、地主さんは私が残したアザミに気づいて

「山下くん、アザミわざと残してた?」
「刈らずに残しておいたよ」と声をかけてくれました。

何よりもお互いがそういった畦の花を大切にする心をもっていたことが嬉しかった。

現代では畦の草刈りは労働であり、草を生えにくくするにはどうしたらいいのかと注目されます。

花などに目を配る余裕などないといったところでしょうか。

しかし、草刈りのときに花を気にしながら気をつけて草を刈る。

花をさけて草を刈る。

その花を見ているときこそ人間らしいのではないかと思うのです。

カエルたちも、もちろん出てきます。

草刈りロボットならそんなものにも気づかずに草刈りを進めていくでしょう。

私はロボットではありません。

多少時間が、かかってもいい。

その情愛こそがこの生き物たちの魂を感じる風景を作っているのだと信じているからです。

そして、この小さな生き物たちの生死が稲を育てていることを

人として忘れてはいけません。

心をうつ農村の美しい風景は、そんな人のまなざしがまだ生きている証なのです。