コラム『百姓のまなざし』

稲の拍手

まだ小さな稲がいっせいに風に揺れる
 
ときおり、首に巻いているタオルが飛んでいきそうになるぐらいの風が吹く
 
そのとき、まだ小さな稲の葉が擦れあい
 
風と共に音を奏でる
 
それはまるで田車を押している私に拍手を贈ってくれているかのように感じるのだ
 
まさにスタンディングオベーションが起きているようで嬉しい
 
稲にそういった人と同じような意識があるのなら
 
この種は私に育ててもらいたく、意識的に私の元にやってきたと思ってもいいのではないか
 
それは他の生き物も同様に、あなたを選んでやって来てくれてると思えたら
 
食料という生産物を作る前に
 
丹精を込めて育てるということが、百姓の天地自然に対する礼儀ではないだろうか
 
そこに百姓の喜びがあり
 
失ってはいけない百姓のこころである